よあけとあさひ
エピローグ
色とりどりの花が、わたしたちの前に広がっている。放課後デートと称して、わたしたちがやってきたのはお花屋さん。高校が別々だから、学校が終わったら合流して放課後デートなんだ。
「すごいね、夜明くん」
「きれいだな」
マリちゃんの命日には、いつもアフリカンマリーゴールドをお供えすることにしている。お供えと言っても、どこでマリちゃんが眠っているか分からないから、家に飾ってあるブレスレットの横に置くだけなのだけれど。
「すみません、アフリカンマリーゴールドありますか」
そばにいた店員さんに声をかけた。すると茶髪の店員さんはくるりと振り返る。
「少々お待ちくださ……」
そこで言葉を止めて、目を丸くしたまま固まる。それはまた、わたしや夜明くんも同じだった。
「アサ……?」
「アス……なの?」
アスの猫目がわたしを見る。高校生になって大人っぽさが増しているけれど、病院の時と変わらないあどけなさも残っている。
「元気になったんだね……!」
「アサこそ、ヨルくんと会えたのね」
涙が止まらないよ。察した夜明くんがすかさずハンカチを渡してくれる。そのようすを見たアスは、呆れたように笑っていた。
そこへ。
ガラッと花屋のドアが開いて、鈴が鳴る。ふわりと和やかな雰囲気が広がった。
「明日香ちゃんー! バイトは順調?」
おどろいてドアのほうを振り返ると、そこにもまたよく知っている顔がひとり。
「お客さんか……って、まさかアサちゃん?!」
「ユウくん、だよね……!」
「嬉しすぎる。再会できるとかすごすぎ!」
出会ったときと同じ勢いで近寄ってきたユウくんがわたしに抱きつこうと手を広げると、すかさず夜明くんが間に入った。