よあけとあさひ

「あのさぁ、俺のこと見えてないわけ?」

「見えてる見えてる。ヒルくんだっけ」

「ヨルだよ!」

「ふははっ、ごめんってヨル」



 肩をすくめて、ユウくんが手を下ろす。唇を尖らせている夜明くんとは違って、ユウくんはニコニコと笑みを絶やさなかった。
 高校生になってずいぶんと大人びた夜明くんだけど、やっぱりユウくんには敵わないみたい。



「改めて、僕の名前は夕翔(ゆうと)。そしてこちら、僕の恋人の明日香ちゃんです」



 自慢げにアスのことを紹介するユウくん。

 明日香と夕翔。二人とも、すごくいい名前だ。



 ふたりとも、また出会って結ばれたんだね。わたしと夜明くんみたいに、惹かれ合う何かがあったんだね。

 そう思うとたまらなく嬉しくなった。



「ほらほら、ヨルも紹介してよ」



 ユウくんに茶化されて、夜明くんはコホンっと咳払いをした。
 そしてわたしの肩を自分の方に引き寄せる。



「俺は夜明。そしてこちら、俺の彼女の朝日」





 目の前では、明日香と夕翔くんが微笑んでいる。

 この日をずっと夢見ていた。




 お互いの腕に視線を落とすと、一緒につくったブレスレットがキラキラと光っている。



 わたしたちはこれからも生きていく。

 逆境を乗り越えたわたしたちは、これから先も、ずっとずっとその先も生きていくんだ。

 どんなにつらいときも、懸命に前を向いて。




 大好きなひとと笑いあって、一緒に。



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