よあけとあさひ

 ベッドの上に座って、ノートと鉛筆を取り出した。


 悲しいことがあったとき、何か失敗をしてしまったとき、つらいことがあったとき、わたしはいつも小説を書く。

 気分が明るい時は小説を読むけれど、こうして落ち込んだときには、自分の気持ちを自分で書いたほうがすっきりするから。


 小学生のときから続けて書いている小説ノートには、たくさんのお話が書かれている。

 どれも、病気の子が主人公のお話ばっかり。


 ほんとうは、体育祭の話とか、修学旅行の話とか、学生らしい話を書いてみたい。だけど、わたしには体育祭の経験も、修学旅行の経験もないから書くことができないんだ。

 それがすごく残念で、悔しい。


 だからいつか退院して、外の世界を見たときに、フツウの学生のお話を書きたいなって思う。




 それから一時間、わたしは夢中で小説を書いた。

 書いているうちにヨルくんへ言ってしまった言葉や、もやもやしていた気持ちが少しずつ晴れていくのが分かる。

 やっぱり、小説ってすごい。



 もちろん、小説を書いてるってことは誰にも言っていない。お父さんにも、お母さんにも、カスミさんにも。

 わたしだけのヒミツなんだ。
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