よあけとあさひ
ーーいつか、外の世界へ出られるのかな。
ぶんぶんと頭を振る。こういうことは思うだけムダ。何度も言い聞かせたでしょ、アサ。
「アサちゃん。あーそーぼー!」
小説を書いていると、急にドアの外から声がした。高くて、よく通る声だからマリちゃんだ。
「え、もうあと十五分くらいしか遊べないよ?」
「いいの! あーそーぼー!」
病院には、夜の六時半までに自分の病室に戻るっていうルールがある。今は、ちょうど六時十分をさしているから、行き帰りの時間を五分とってもギリギリ十五分くらいしか遊べない。
だけど、それでもいいとマリちゃんは言う。マリちゃんはわたしの唯一のお友達だから、できるかぎりお願いには応えてあげたい。
「いいよ、遊ぼうか」
マリちゃんがわたしの手を引く。わたしは慌てて小説ノートを掴んだ。
しまわずに放置しておいて、誰かに見られたらたいへん。自分で持っているほうがマシだもの。
ひだまりルームでふたり、お手玉をした。
マリちゃんは女子小学生だから無邪気だけど、おにごっことかの激しい遊びはねだってこない。わたしの体調も、マリちゃん自身の体調もしっかり把握できているんだと思う。
そういうところが、マリちゃんのすごいところだ。