よあけとあさひ
「おはようアサ! それでさ、小説の!」
わたしを見るなり大声でそう告げたのは他でもない、ヨルくんだった。わたしは慌ててヨルくんの腕を掴み、ひだまりルームを出る。
一緒にいたマリちゃんが「待ってよアサちゃん」と叫んでいたけれど、こればかりはどうしようもなかった。心の中でごめんねと謝っておく。
「どこ行くんだよ! ……って、いつものベランダか」
予想を当てられた。少し決まりが悪いけれど、全然気にしてないそぶりでベランダに直行した。
「わたしの名前、どうして」
ーーアサ、って。まだ伝えてないのに。
不思議に思って問いかけると、ヨルくんは当然のように言った。
「だってノートに名前書いてたじゃん」
絶望した。やっぱり、ノートを読んだのはヨルくんなんだ。たぶん、あの感想も。
「中身、みた?」
「うん。ばっちり、ぜんぶ」
「……さいってい!!」
ノートの外側に名前を書いていたのだから、わざわざ中身なんて見なくてよかったのに。ヨルくん、イジワルだ。
「ていうか、まずは俺にありがとうじゃない? 見つけてあげたんだからさ」
それなのに、ヨルくんは悪びれるようすもなくお礼を求めてきた。
まぁ、見つけてもらったのはたしかに。
お礼を言ったほうがいいかも。
「……ありがとう」
「どーいたしまして」