よあけとあさひ
「俺、アサのファンになったよ! 続き読みたいんだけど、ある?」
「ううん。まだ書いてる途中なの」
「じゃあまた読ませてよ。アサの小説すごくおもしろいから、楽しみにしてる」
うん、と返事をして小説ノートを胸の前で抱きしめる。
さいしょは、勝手に小説を読むなんてサイテーだと思ってた。だけど、今はわたしのほうが、ヨルくんに小説の続きを読んでほしいと思っている。
「ヨルくんは小説読むのが好きなの?」
もともと読書家だったとしたら、わたしの小説にキョウミを持つのもわかる。小説を書いている人なんてめずらしいし、観察の対象になるかもしれない。
でも、ヨルくんの回答はわたしが思っていたものとは違った。
「ぜんぜん。今まで読んだのは三冊くらいだよ」
「すくなっ!」
「だって小説って漫画と違って絵がないから読みづらいんだ」
ふてくされたように言うヨルくん。
絵がない分想像できるのが、小説のいいところじゃないの……?
そう思ったけど言うのはやめた。ヨルくんがこれ以上ふてくされることがないように。
「でもアサの小説は読めたよ。おもしろかったから」
「ほんとに?」
「ああ。小説にハマる理由がわかった気がする」
ヨルくんは「これで今年の読書感想文はクリアだな!」と言って、頭の後ろで腕を組んだ。