よあけとあさひ

「ねぇ、ヨルくん。ずっと思ってたんだけど、ドクショカンソウブンってなに?」



 さっきから何度か出てきた単語を、わたしは知らなかった。勇気を出してきいてみると、ヨルくんは「はぁ!?」と大きな声をあげた。



「小学生の時から書かされるじゃん。書いたことないの?」

「わたしずっとこの病院にいるから。たまに家に帰ったりはあったけど、カラダが心配で学校に行ったこともないし、宿題をしたこともないんだよね」

「なるほど、そういうことか」


 驚きつつも納得したようにうなずいたヨルくんは、少しにがい顔をしながら読書感想文の説明をしてくれた。



「夏休みに一冊の本を読んで、その感想を書くんだよ」
「え、楽しそう!」
「そんなこと言っても原稿用紙五枚だからな? ちょーしんどいんだよこれがまた」



 いつもの口調とは違って、熱弁するヨルくん。ここまで言うのだから、ほんとうにたいへんなのだろう。



「今年の夏休みもそれ書くの?」

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