よあけとあさひ
1. キミとの出会い
1. ここはそういう場所
中学二年生、夏休み。
わたしは目の前に広げた本の文字を、永遠と目で追っていた。
ダメだ。ぜんっぜん入ってこない。
ミーンミンと外でセミが鳴いている。セミの寿命は短いって聞いたことがあるから、今、一生懸命に鳴いているんだろう。
「……わたしと同じだね」
ひとりでそっとつぶやいて、本を閉じた。
内容が全然入ってこないのに、読み進めるのは苦しいから。
わたしと同じだね。
ーー寿命が短いってところ。
今度は心の中でつぶやいた。
目を閉じて、セミの声に耳を澄ます。
ミーンミン、ミンミーン、ミ────
「……あ」
うるさく鳴いていたセミの声は、そこでぷつんと途切れた。
急に静かになって、同時にぞわっと鳥肌がたった。血液がものすごいはやさで身体中をめぐっていくのがわかる。
もしかすると、いや、もしかしなくても、きっと。さっきまでうるさく鳴いていたセミは、死んでしまったのだと思う。
「アサちゃん、体調どう?」