よあけとあさひ
たずねると、ヨルくんは当たり前だと言ったようにこくんとうなずいた。
「もちろん。だって夏休み明けたら提出だし」
「……入院してるのに?」
「それ、どういう意味?」
とつぜんヨルくんの目の色がかわった。わたしは焦ってヨルくんから目を逸らす。
ヨルくんの声は低くなっていた。
「ずっと入院してるわけじゃないんだから、必要だろ」
「……そっか、そうだよね」
ぽつりとつぶやいて、床に視線を落とす。
そうか、ヨルくんは病気を治してこんなところはやく出ていくつもりなんだ。当たり前のことだ。
ここは、病気を治す場所なんだから。
自分の考えとは違う、ヨルくんのまっすぐな考えにがく然とした。
ヨルくんはすべてを諦めているわたしとは違って、未来をみている。
病気が治ることを当然のように考えている。
それってすごいことだと思った。
……ヨルくんは、何の病気なんだろう。
治ることを当然のように信じられるような病気なのだろうか。いや、この病院に来たってことはそんなに簡単に治る病気なわけがない。
きっと、ものすごく苦しくてしんどい病気を抱えているはずだ。
それなのに、ヨルくんはどうしてこんなにも前を向いていられるのだろう。