よあけとあさひ
ヨルくんはすごい。強くて、いつでも前を向いている。
それに比べてわたしはちっぽけで、弱い。自分のことなのに、とっくの前に生きる希望を失ってしまっている。
「ねぇ、ヨルくん」
ーーどうしてそんなに前を向いていられるの?
そう聞こうとしたけれど、なんだかこわくなってやめた。答えを聞いたところでわたしが強くなれるわけではないし、よけいに自分がみじめに思えるだけだ。
「ううん、なんでもない。ごめんね、いろいろおかしなこと言って」
「謝る必要はないよ。大丈夫」
にかっと笑ったヨルくん。その瞬間、胸の奥がかすかにうずいた。
びっくりして息を呑む。
「どうかした? アサ」
「う、ううん。そろそろ戻ろっか、ヨルくん」
はじめての気持ちが心の中をぐるぐるまわっている。
なんだろう、この気持ち。
ほわほわして、心が浮いてるみたいな不思議な気持ち。
わたしはそれを誤魔化して、ヨルくんと一緒に病室に戻った。