よあけとあさひ

「あ、わたしね……」

「今から寝るから。あたし、仲良くなるつもりとかないし」



 勇気を振り絞ってアスに話しかけようとしたとたん、アスはキッと目を吊り上げてわたしたちを睨んだ。いや、正確には"わたしを"睨んだ。

 あまりに突然でうろたえていると、アスは少し、ほんの一瞬だけ悲しそうに顔を歪ませた……ような気がした。



「……迷惑だから」



 シャッ、と目の前でカーテンが閉められる。

 そろりとヨルくんのほうを見ると、ヨルくんはなんでもないようにカーテンを見つめていた。


 いや、少しだけ……残念そうではある。




「行こうか、アサ」

「うん……」



 今のわたしたちがとるべき行動は、とにかくはやく病室を出ることだった。








「ねぇヨルくん。アスにあんなふうに言われて悲しくなかった?」


 どこへ行くでもなく廊下を歩きながら、わたしはヨルくんに問いかけた。

 ただカーテンを見つめていたときのヨルくんは、少し残念そうにはしていたものの、そこまで落ち込んでいるようなようすは見せなかった。正直、アスにあんなことを言われて、わたしは結構落ち込んだのに。




『あたし、仲良くなるつもりとかないし』

『……迷惑だから』




 アスに好かれていないということは分かっていた。けれど、はっきり言葉にされてしまうと心が痛くなる。鋭い針を刺されたような感覚だ。


 心苦しい。
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