よあけとあさひ

 しばらく天井を見上げながら歩いていたヨルくんは「べつに」と言う。何か言葉が続きそうだったから、わたしは黙ってその続きを聞くことにした。


「今はまだ仲良くなれてないだけで、いずれ仲良くなるし。焦らず、急がずゆっくりいこうぜ」

「いずれ仲良くなるって……どうして言い切れるの?」

「俺には分かるんだよ、そういうの。ソースは俺の勘」



 勘ほど頼りない根拠はない。

 だけど、ヨルくんは自信満々に親指を立てて、グッドサインをした。



「俺、最初アサを見たときも思ったよ。直感的に、仲良くなるんだろうなって」



 その言葉にドキリとした。

 目が合ったあの瞬間に、ヨルくんはそんなことを思っていたなんて。




「実際、当たってるだろ。はじめてアサの顔を見たとき、これからきっと何かすごいことがはじまるんだってワクワクしたね」

「ワクワク?」

「そう。これから楽しみだ!って思ったんだ」



 わたしはこっそり息をついた。このため息は、ヨルくんへの尊敬を含んだものと、逆にわたしへのみじめさがにじんだものだ。


 やっぱりヨルくんはすごい。

 ほんとうに、すごい。
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