よあけとあさひ
「アサ」
ヨルくんが立ち止まってわたしの名前を呼ぶ。
わたしも同じように立ち止まると、ヨルくんはまっすぐにわたしを見つめていた。
自然と背筋が伸びる。
「これから、たくさん楽しいことしていこう」
思わず、うん、とうなずいた。
自分でもびっくりするくらい、素直に。
楽しいことなんて何もない。ただ、この命が終わってしまうのを待つだけ。
ずっとずっとそんなふうに思っていたのに、ヨルくんと一緒にいるときはいっさいそんなことを考えないでいられる。
むしろ、ヨルくんとたくさん楽しいことをしたい。わたしたちの未来は、希望に満ち溢れている。
ーー そんなふうに、思ってしまったんだ。
「わたしも、ヨルくんと楽しい思い出つくりたい」
そう言うと、ヨルくんは真夏に咲くひまわりのような顔で笑った。