よあけとあさひ

2. 手紙が結ぶもの


「手紙書き合おうよ、アサ」


 それは、ヨルくんの言葉がはじまりだった。


「え、手紙?」

「そう。紙切れとかでもいいから、何か文字を書いてお互いに交換するんだ」

「すてきだね。わたし、やりたい」


 うなずくと、ヨルくんは「さっそくだけど」と薄紫色の封筒をわたしに差し出した。



「え?」

「楽しみすぎて、アサの了解もらう前に書いた。たぶん一緒にやってくれるだろうと思ってたから」



 男の子から手紙をもらうのははじめてだった。マリちゃんや看護師さんからもらうことはあっても、同年代の男の子からだなんて。


 ドキドキしながら、慎重な手つきで受け取る。



「ありがとう。今度はわたしがヨルくんにお手紙書くね」

「まじか! よろしく!」



 心底うれしそうにヨルくんが笑うから、わたしまで気分が明るくなる。


 わたしは、ヨルくんがくれたお手紙をじっと見つめた。


 薄紫の封筒。

 下のほうにいくにつれて白色にグラデーションになっている。




「これ、どこで手に入れたの?」

「母さんに言ったら買ってきてくれた。どうせならきれいなほうがいいかなって」



 そう言ってから、ヨルくんは目を開いて「あ、でも」と言葉を続けた。



「こんなちゃんとしたやつじゃなくて、紙切れでもほんとに嬉しいから。無理して用意しようとしないで」



 わたしへの細かい気遣いも忘れない。さすがヨルくんだ。

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