よあけとあさひ

 ヨルくんは、「べつにはずかしい内容ではないけどさ」となにやらぶつぶつつぶやいていた。



 するとそこへ、



「アサちゃーん! ヨルくーん!」



 と大きな声が聞こえてきた。マリちゃんだ。

 何度注意されても反省することなく、たったっと走ってくるマリちゃんを、ヨルくんが手を広げて待つ。



「おはよう、マリ!」

「わぁい、ヨルくんおはよっ!」



 ヨルくんがこの病院にやってきて、はやくも二週間。

 ヨルくんは私やアスだけでなく、マリちゃんや他の患者さんにも積極的に話しかけている。だから、いろんな人から好かれて、「ヨルくんはこの病院の太陽ね」なんて言われている。


 もちろん、マリちゃんより下の年齢の子たちの相手もお手のもの。最初こそぐずったり、嫌がったり、戸惑ったりしているみんなも、最後にはぜったいにヨルくんのことを大好きになっている。


 まるで魔法を使っているみたいだった。

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