よあけとあさひ
ヨルくんの胸にとびこんだマリちゃんは、満足そうに目を細くして笑っている。
ヨルくんのことが大好きだってことが、ものすごく伝わってきた。
じつはそんなヨルくんでも、どうやらアスには苦戦しているらしい。
わたしと一緒にいるときに挑戦するのがいけないのか、なかなか相手にしてもらえないのだ。
そのたびにヨルくんは、
「まあどうせ仲良くなるし。焦らない焦らない」
と呑気に笑っている。
わたしからしたら信じられないようなことだけど、ヨルくんはあまり深く考えることなくあっけらかんとしている。
「ひだまりルームでみんなが待ってるよ!」
「よっしゃ。行こうか、ひだまりルーム!」
マリちゃんに引っ張られるようにして、ヨルくんが声を上げた。みんな、ヨルくんの登場を待ち望んでいるみたいだ。
「ほら、アサも」
とつぜんヨルくんに腕をつかまれた。
「え……ちょ」
困惑しているひまもなく、強制的に連行される。
あまりに唐突なことだったけれど、不思議と嫌な気分ではなかった。
それよりも、つかまれている部分があつくて、ドキドキという鼓動の音がそこから伝わってしまうような気がした。
「あれ、顔赤い? アサ」
「あ、赤くないしっ!」
不思議そうに首をかしげるヨルくんには、顔の赤みなんてバレないでほしい、とわたしはただひたすらに祈っていた。