よあけとあさひ
*

 その夜、わたしはひとり病室でヨルくんの手紙を読んだ。


 乱暴とまではいかないけれど、かなり芸術的な字が並んでいる。



 大きくて、濃い。まるでヨルくんの意志の強さを表すような、そんな筆跡だった。




──────



アサヘ



とつぜんの手紙にびっくりすると思うけど、
どうか受けとってくれるとうれしい。

何か特別なことを伝えたかったわけでもないけれど、なんとなく、
今のアサへの気持ちを残しておきたかったから手紙を書くことにした。

アサにはいちど言ったことがあるけど、
はじめてアサをみたときものすごくワクワクしたんだ。
きっと楽しいことがはじまるにちがいない、ってね。

でも、こんな病院のなかじゃ楽しいことなんてかぎられているから、俺とひとつだけ約束してほしいんだ。

夜は病室に戻らなきゃいけなくて、
ひとりぼっちで朝を待たないといけない。
それってすごくこわいし、不安なことだから。

俺たちが元気になって、こんな病院生活ともおさらばしたら。



いつか一緒によあけをむかえて、あさひを見よう。



ヨル
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