よあけとあさひ
スタスタとひだまりルームから出ていくヨルくん。その背中は冷たくて、何度呼びかけても振り返ってくれることはなかった。
わたしはその場に立ち尽くすことしかできなかった。
ヒュー、ヒューと浅い息が口から洩れる。これは、まずいやつかもしれない。
胸をおさえながら、わたしはさっきの口論を思い返す。
……わたしはまた言ってしまった。
過去に同じようなことを言ってしまって、反省したというのに。
ヨルくんは未来を当然のものとして考えている。それはすごく素敵なことだ。否定したらいけなかったのに、わたし、最低。
そのときだった。
「うっ……!」
急に心臓のあたりが痛み出した。さっきから、身体がおかしいと思っていた。
まずい、発作だ。
「っは、はぁ……」
顔を歪ませていると、ひだまりルームの見回りをしていた看護師さんがあわてて駆け寄ってきた。
「アサちゃん、落ち着いてね。今先生が来てくれるからね」
「っは……ごめ、ヨル、く……」
うつむきながらたえていると、勝手に涙があふれてきた。
それは、発作が苦しいからあふれる涙なのか。それとも、ヨルくんに嫌われてしまったかもしれない恐怖からあふれる涙なのか。
そんなことを考えているひまもないくらい、呼吸が乱れて苦しくなっていく。
ーーほらね。わたしの身体は、命は。
こんなにも、脆くて弱いの。
ヨルくんが描くような未来は、きっと。
わたしには、ないんだ。