よあけとあさひ

 わたしは生まれたときから心臓が弱い。

 心臓の病気と判明してから、この病院でずっと過ごしている。



 治すには誰の心臓を「臓器提供」というかたちでもらう必要があるのだけれど、ドナーはなかなか見つからない。

 それに、臓器を待つということは、誰かが亡くなるのを待つってことだ。


 たくさんの人の死をなによりも近くで見てきたわたし。
 そんな残酷なこと、望めないよ。



「しばらく……ほっといてください」



 自分のわがままだってことは、じゅうぶんすぎるほど自覚していた。だけど、今はひとりになりたい。何も考えずに、ただひとりになりたい。


「わかったわ。でも、体調が悪くなったらすぐにナースコール。いいわね?」

「……はぁい」


 頭まで布団をかぶった。

 そうしていると、じわりと涙が浮かんで、あふれて、止まらなくなった。布団が涙で濡れていく。苦しい。悲しい。つらい。


 ヨルくん、今ごろおこってるかな。
 もうわたしのこと嫌いになっちゃったのかな。

 もしヨルくんがわたしのことを嫌いになっていたとしても、嫌われて当たり前のことを言ってしまったのだから、仕方がない。
 どうしようもない過去に、わたしはとらわれてばかりだ。
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