よあけとあさひ
*

 手紙を書くのは、想像していたよりもずっと難しいことだった。


 言葉にしようとすればするほど、なんて書いたらいいかわからなくなってしまう。

 ヨルくんに謝りたいこと、伝えたいこと、お願いしたいことがたくさんあるのに、なかなか文字にならない。


 書こうと決めた日から、はやくも三日が経ってしまっている。
 その間、ヨルくんとは一度も話していない。わたしが病室にこもっているというのもあってか、顔を合わせる機会がほんとうになかった。



 文字を書いては消して、書いては消しての繰り返し。そのうちびりっと音がして便箋が破れてしまったから、もったいないけれど何度も便箋を新しくした。



「アサちゃん、ゴホッ……ブレスレット、づくり、して……遊ぼ!……ケホっ」



 鉛筆をにぎっていると急に声が聞こえて、マリちゃんの顔が見えた。けれど、そのときのわたしは手紙が書けない焦りと苛立ちで、マリちゃんと遊んであげる余裕がなくて。



「ごめん、また今度ね」



 少しだけ顔を上げて答えてから、またすぐに手紙に視線を戻す。すると、小さな足音とともにわたしの近くに誰かが立った。

 それは言うまでもなくマリちゃんだった。



「やだ……っ! 今日が、いい、の……!」



 普段は何か事情があって断ったら、「わかった」の一言で諦めてくれるマリちゃんだけど、今日だけは違った。

 ゴホゴホと咳き込みながら、途切れ途切れの声でわたしに訴えてくる。


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