よあけとあさひ
その日の夜は、なんだか病院内が騒がしかった。看護師さんがバタバタと廊下を走るように動き回っていて、不穏な空気が立ちこめている。
カスミさんも、茶色い髪を揺らしながら真剣な顔で道具や薬を運んでいた。
なにかあったんだ。
わたしはベッドのなかで縮こまりながら、そう悟った。
わたしは、この病院の、緊迫した今みたいな空気をよく知っている。
何度も経験してきたけれど、絶対に慣れないものだ。
こういう空気を漂わせる夜がいちばん嫌いだ。やだ。こわい、やめて。どうか、助かって。
布団の中でぎゅっと目をとじて、ただこの夜が明けるのを待つことしかできない。
こわい。こわい。
こんな夜は、だいっきらい。
こうして夜の病院が先生や看護師さんで騒がしくなるとき。
それは、誰かの命がーーーー死に近づいているときだから。