よあけとあさひ
3.キミとの涙
1. 花言葉
遠い遠い場所に、一人の女の子が立っていた。黄色とオレンジ色の花に囲まれて、小さい背中をわたしに向けている。
風がふいて、花が横にゆれた。それと同時に、女の子が振りかえる。
マリちゃんだった。
わたしは必死に走りだした。
「マリちゃん……!!」
死んじゃったなんてウソだよね。
もっともっといっぱい遊ぼうよ。
まだいっしょにブレスレットつくってないよ。
元気になったら、いっぱい走って遊ぶんでしょ?
走っても走っても、マリちゃんはいっこうに近くならない。むしろ、近づこうとすればするほど遠くに行ってしまうみたいだった。
「お願いマリちゃん、行かないで……」
するとマリちゃんは、手に持っていた黄色の花をわたしに向かって投げた。
距離が遠いからここまで届くはずがないのに、なぜかわたしのもとへと花が届く。それだけで、これはきっと夢なんだって悲しいけれど悟った。
マリちゃんのくちびるが、ゆっくりと動く。
「これ、アサちゃんにあげる」