よあけとあさひ
その瞬間、涙があふれた。
それは、何度も聞いたことがある言葉だった。
アフリカンマリーゴールドを大切に持ちながら、マリちゃんのほうを必死に見つめる。
「マリちゃん! お願い、いかないで……ごめんね、わたし、遊んであげられなくて。ブレスレット、つくってあげられなくて……!」
さあっと風がふいて、髪の毛が顔をおおい隠す。何度も手で目をこすったけれど、視界がどんどんぼやけていって、そして────。
「……っ!」
───目が覚めた。
いつもの天井が見えるけど、今日はなんだかぼやけている。そっと手で目に触れると、濡れていた。
……わたし、泣いたんだ。
泣きながら目を覚ますのははじめてのことだった。
「おはようアサちゃん」
「カスミさん……」
今日もいつもと変わらない笑顔で、わたしのところに近づいてくるカスミさん。
カスミさんもマリちゃんとたくさんお話ししていたし、お友達みたいに接していたはず。
それなのに、どうしてそんなに笑っていられるの……?