よあけとあさひ
カスミさんの話を聞くと、どうやら少し前にマリちゃんからこの花束を買ってほしいと頼まれたらしい。
カスミさんが病院の先生と話し合ってネットで注文したものがようやく届いたんだそう。
「マリちゃんね……これをアサちゃんにわたすんだってすごく張りきってた」
「自分用じゃなくて……?」
「ええ。アサちゃんに、って。そこだけはいちども曲げたことがないのよ、マリちゃん」
「どうしてそんな……それに、マリちゃんはどうしてこんなにアフリカンマリーゴールドが気に入っていたんだろう」
ふつう、花によほど詳しくない限りは『アフリカンマリーゴールド』なんて花名、出てこないはず。それなのに、マリちゃんがこの花にこだわる理由って?
受け取った花束を見つめていると、ふと小さなカードがあることに気づいた。
なんだろう、これ。
【アフリカンマリーゴールド】と花名が書かれているから、そんなに不思議なものではない。それなのに、胸の奥がぞわぞわして、わたしに何かを伝えてくるみたいだった。
おそるおそる、カードを裏返す。その瞬間、マリちゃんがどうしてアフリカンマリーゴールドにこだわっていたのか、すべてわかった。気付けば胸の前で手を握り、声を漏らしていた。
「そういうことだったんだね……マリちゃん」
涙で前がにじんでいく。嗚咽を漏らしながら泣き続けるわたしの背中を、カスミさんが優しくなでた。