よあけとあさひ
「この前は、ひどいこと言ってごめんな。ついカッとなって、アサのこと傷つけた」
ヨルくんは、まっすぐにわたしを見つめて、そう告げた。ヨルくんのきれいな瞳がゆら、と揺れる。
「俺、ここに来たばっかりだから……誰かが死ぬのとか、考えたことなかったし。でも、マリが死んで、はじめてわかった。アサはずっと、何度も何度もこのつらさを経験してきたんだな」
「ヨルくん……」
「そりゃ不安にもなるよな。それなのに、俺、アサの気持ち全然わかってなかった。本当にごめん」
「ううん、違うよヨルくん。悪いのはわたしのほうなの」
ヨルくんの謝罪のあと、わたしもぎゅっと目をつむって頭を下げた。唇がふるえる。
本当の気持ちを言おうと思ったけれど、まさかこんなに緊張するなんて思わなかった。
「わたし、前を向いて生きることができないの。ヨルくんみたいに、ひたむきに前をむいて強く生きられなくて、それで……それでね」
息がつまって「えっと……」と言葉を探す。誰かに思いをぶつけたことも、正直な気持ちを吐露することも、すべてがはじめてだったから、とまどいと焦りで涙が出そうになる。
だけど、ヨルくんがぎゅっと手を握ってくれるから、「大丈夫だよ」と言われてるような気がした。