よあけとあさひ
窓から入っていたあたたかい風に、アフリカンマリーゴールドが揺れる。
わたし、もう迷わない。
マリちゃんに背中を押してもらって、ヨルくんに手を引いてもらって。
もう、うじうじ悩んで諦めてばかりのわたしなんて、やめてやるんだから。
すると、今までずっとだまっていたヨルくんが、目を伏せて言った。
「……アスは、きっと似てるよな。アサと」
わたしには、その意味がよくわからなかった。
容姿はそこまで似ていない。わたしがタレ目なのに対してアスは大きくて丸っこい猫目をしているし、全体的に薄い顔をしているわたしに比べて、アスは目鼻立ちがくっきりとした濃い顔をしている。
おそらく、ヨルくんが「似ている」と言ったのは性格のほうだ。
だけど、具体的にどこが似ているのか、それはいまいちよく分からなかった。
「え、似てるって……なにが?」
問いかけると、ヨルくんは意味深に少しだけ首をかしげた。ごまかすようなその仕草に、心がざわついた。
「……とにかく、もううじうじ悩んだりしないで。うるさくて迷惑なのよ」
アスの言葉に、うん、とうなずく。ヨルくんやアスと話してから、落ち込んでいた気分があがっている。それはたしかだった。
アスのトゲトゲしい口調にも、今はなぜか、ほんの少しだけ優しさが混ざっているような気がした。
まるで、マリちゃんがいなくなってしまったことに絶望しているわたしを、冷たく接しながらも救ってくれるような────。