よあけとあさひ
俺は自分の病室に戻って、さっきアサからもらった手紙を机に置いた。
【ヨルくんへ】
封筒の表面に、丁寧な字でそう記されている。
残念ながら俺は字がきれいなほうではないから、アサの整った字に感心した。
俺のぐちゃぐちゃな字をアサに渡してしまったことが、少しだけ恥ずかしい。
でも、思いはちゃんとこめたから、きっとアサだって分かってくれているはずだ。
深い青色の封筒をじっと見つめる。
これは、夜空の封筒だった。藍色とも言える空に、小さな星が光っている。
俺が『アサ』という名前に合わせて朝空の封筒を渡したのと同じで、アサも俺の名前に合わせてくれたのかもしれない。きっと、そうだろう。
たまらなくうれしくなって、封筒をぎゅっと抱きしめた。
アサは俺にたくさんの気持ちを教えてくれる。
アサが喜んでいるときは俺も嬉しくなるし、泣いているときにはすぐそばにいって背中を撫でてやりたくなる。こわがっているときはとなりで守ってあげたいし、手紙を渡した時や手をつないだときに見せる少し照れた表情は、俺の鼓動をどくどくと速くさせる。