よあけとあさひ
「マリが描くのはなんでしょーか」
「……いつも同じだから分かるよ。アフリカンマリーゴールド」
「ピンポーン!!」
マリちゃんはオレンジ色と黄色のペンでさらさらと花を描いていく。
はじめて見たときは分からなかったけれど、何度も「アフリカンマリーゴールド」と教えてもらったおかげで覚えることができた。
「難しい名前なのによく知ってるね」
「マリがいちばん好きな花だから!」
「どんなところが好きなの?」
たずねると、マリちゃんは少し考えるそぶりをした。それから、
「色かな!」
と元気いっぱいに答える。
「色? じゃあひまわりでもよくない?」
「あ、そっか。うーん、なんだろ」
少し意地悪な質問にも、一生懸命答えようとするマリちゃんがかわいい。
おだやかに見守っていると、マリちゃんが「できた!」と紙を頭の位置に掲げてみせた。
おしゃべりしながら、絵を描く手は止めていなかったらしい。さすがだ。
「これ、アサちゃんにあげる」
「え、いいの?」
「うん!」