よあけとあさひ

「……」


 ユウくんはなにも言わずに、じっとアスを見つめている。しばらく見つめ返していたアスも、さすがにじろじろ見られることに限界がきたみたいで、


「な、なによ!」


 と声をあげた。
 すると、今まで固まっていたユウくんが、がしっとアスの手をつかんだ。これにはアスだけでなく、わたしまでおどろいてしまう。



「キミ、かわいいね! 名前なんて言うの? 僕と友達になってよ!」

「……は、はぁ? 勢いがすごいからちょっと離して」

「こんなにかわいい子見たのは生まれて初めてだよ! ねぇ、僕のこと恋人にしてくれる未来はないかな?」


 となりでぶるっとアスが身震いした。


「ぜったいにイ・ヤ!!」



 乱暴はよくないと言っていたアスが、ユウくんの手を振り払う。これにはわたしも同意だった。



「きゅ、急になんなのよ! あたしだまされないから!」

「お、おちついてアス」


 アスの身体を抱きしめてユウくんから遠ざけると、ユウくんは「アスちゃんって言うんだね」とニコニコしながら言った。


「あ、やっちゃった……」


 真っ青になるわたしに、アスははぁっとため息をつく。


「あたし、そんなにぐいぐいくる人と仲良くなれないから! さよなら!」
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