よあけとあさひ
遠くなっていくアスの背中を見つめながら、ユウくんがはあっとため息をついた。
「なんてかわいい子だろう……ぜったい仲良くなりたい」
わたしはその横顔を見つめながら考える。
はっきり言って、アスにとってのユウくんの第一印象はそこまでよくないと思う。だというのに、ユウくんは誇らしげに胸をはっていた。
よっぽど自信家なんだろうか。
「アサ!!」
病室での検診を終えたヨルくんがかけよってくる。そしてわたしのとなりにいるユウくんに気づくと、たちまち真面目な顔になってキッとユウくんをにらんだ。
「誰? アサはこっちだろ」
ぐっと強引に手を引かれて、わたしはヨルくんの身体にぶつかる。そのままヨルくんの後ろへと隠すみたいに引き寄せられた。
「わっ……」
驚いて声を出すと、少し振り返ったヨルくんの瞳とかち合う。きゅっと胸がしめつけられて、息が止まるような感覚がした。
わたしたちのようすを見ていたユウくんが「ふーん」と意味ありげな声を落とす。
「なるほどね、心配しないで。僕はアスちゃん一筋だから」
「……あっそ」
「僕はユウ。キミの名前は何?」
「ヨルだよ」
ぶっきらぼうに答えたヨルくんは、無邪気な顔で手を差し出すユウくんを見つめた。いつも元気で明るいヨルくんが、めずらしく動揺しているのがわかる。