よあけとあさひ
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「アサちゃんに来てもらったのはね、大切な話があるからなの」


 わたしの後ろの椅子には、お父さんとお母さんが座っている。そして、目の前には雫先生がいて、近くにはカスミさんがいた。

 ごくりとつばをのむ。わたしはこの場所と、この雰囲気のなか聞く話がとっても嫌いだ。


 神妙な空気が流れるなか、雫先生がゆっくりと口を開いた。









「……ドナーが、見つかりました」
















「え」



 思わず間抜けな声が洩れる。しーんと静まり返ってから、しばらくして後ろからお母さんのすすり泣く声が聞こえた。


 雫先生は「今から詳しい説明をします」と言ってさまざまな書類をわたしたちの前に差しだす。
 わたしはそれをただ呆然と見つめていた。


 だって、あまりにも実感が湧かなかったから。先生の説明を聞いてもなお、他人事だとしか思えなかった。



「アサちゃん。あなたは、生きるの。これからも、私たちと生きるのよ」



 わたしの目をまっすぐに見て雫先生が言う。



「手術日は三週間後。それまではとにかく安静にしていてほしいの。今回奇跡的にドナーが見つかったけれど、アサちゃんの心臓が日に日に弱まっているのは事実だから、無理をしたらどうなるのかわからない」

「……わかりました」

「大変な手術にはなると思うけど、一緒に頑張りましょうね」



 こくりとうなずく。

 わたしは小さいころから何度手術を受けてきただろう。記憶にないくらいだ。

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