よあけとあさひ
**
「アサちゃんに来てもらったのはね、大切な話があるからなの」
わたしの後ろの椅子には、お父さんとお母さんが座っている。そして、目の前には雫先生がいて、近くにはカスミさんがいた。
ごくりとつばをのむ。わたしはこの場所と、この雰囲気のなか聞く話がとっても嫌いだ。
神妙な空気が流れるなか、雫先生がゆっくりと口を開いた。
「……ドナーが、見つかりました」
「え」
思わず間抜けな声が洩れる。しーんと静まり返ってから、しばらくして後ろからお母さんのすすり泣く声が聞こえた。
雫先生は「今から詳しい説明をします」と言ってさまざまな書類をわたしたちの前に差しだす。
わたしはそれをただ呆然と見つめていた。
だって、あまりにも実感が湧かなかったから。先生の説明を聞いてもなお、他人事だとしか思えなかった。
「アサちゃん。あなたは、生きるの。これからも、私たちと生きるのよ」
わたしの目をまっすぐに見て雫先生が言う。
「手術日は三週間後。それまではとにかく安静にしていてほしいの。今回奇跡的にドナーが見つかったけれど、アサちゃんの心臓が日に日に弱まっているのは事実だから、無理をしたらどうなるのかわからない」
「……わかりました」
「大変な手術にはなると思うけど、一緒に頑張りましょうね」
こくりとうなずく。
わたしは小さいころから何度手術を受けてきただろう。記憶にないくらいだ。
「アサちゃんに来てもらったのはね、大切な話があるからなの」
わたしの後ろの椅子には、お父さんとお母さんが座っている。そして、目の前には雫先生がいて、近くにはカスミさんがいた。
ごくりとつばをのむ。わたしはこの場所と、この雰囲気のなか聞く話がとっても嫌いだ。
神妙な空気が流れるなか、雫先生がゆっくりと口を開いた。
「……ドナーが、見つかりました」
「え」
思わず間抜けな声が洩れる。しーんと静まり返ってから、しばらくして後ろからお母さんのすすり泣く声が聞こえた。
雫先生は「今から詳しい説明をします」と言ってさまざまな書類をわたしたちの前に差しだす。
わたしはそれをただ呆然と見つめていた。
だって、あまりにも実感が湧かなかったから。先生の説明を聞いてもなお、他人事だとしか思えなかった。
「アサちゃん。あなたは、生きるの。これからも、私たちと生きるのよ」
わたしの目をまっすぐに見て雫先生が言う。
「手術日は三週間後。それまではとにかく安静にしていてほしいの。今回奇跡的にドナーが見つかったけれど、アサちゃんの心臓が日に日に弱まっているのは事実だから、無理をしたらどうなるのかわからない」
「……わかりました」
「大変な手術にはなると思うけど、一緒に頑張りましょうね」
こくりとうなずく。
わたしは小さいころから何度手術を受けてきただろう。記憶にないくらいだ。