よあけとあさひ
三週間後といえば……ちょうど虹かけ祭りの翌日だった。
「あの、先生」
「なぁに?」
「……わたし、虹かけ祭りに行きたいんです。お願いします」
手術前日は安静に。そう言われて外出許可が出ないかもと思うと不安になった。案の定、雫先生はキュッと口を結んでから、しばらくして重々しく言葉をこぼす。
「前日だから病室でずっと安静に」
がっくりと肩を落としそうになったところで、雫先生はにこっと笑った。メガネの奥の目が細くなる。
「……と言いたいところだけど、八時半までに病室に戻ること、あと絶対一人にならないことを約束できるならいいわよ。特別に許可してあげる」
「え」
「くれぐれも無茶はしないこと!」
雫先生はバチッとウインクをした。その横でカスミさんも同じくウインクをしている。
カスミさん、両目閉じちゃってるけど。
クスリと笑ってしまった。
「アサ、よかったな」
「アサがここまでがんばったからよ。本当によかった」
クスクス笑っているわたしを、お父さんとお母さんが抱きしめる。二人とも、ドナーが見つかったことを心から喜んでくれているようだった。
「うん。ありがとう、お父さんお母さん」
虹かけ祭り、そして運命の手術まであと、三週間。