よあけとあさひ

 はっきりと聞こえた。一音一音、大切に大切に伝えられたその言葉は、まっすぐにわたしの耳にとどいた。

 しばらく固まって動かないでいると、脳が言葉の意味を理解するより先に顔が熱くなっていく。



「……ど、うして」

「なんとなく、アサと考えてることが同じような気がして」



ーー好きだよ。

 まさか、同じことを思っていたなんて。わたしは心の中で思うだけだったけれど、ヨルくんはこうして言葉にしてくれた。

 次は、わたしの番だ。



 わたしは、いつも不安なときにヨルくんがしてくれるみたいに、いちご飴を持っていない方の手でぎゅっと、ヨルくんの手を握った。
 ヨルくんの目が大きくなる。



「あのね、ヨルくん。あの、ね……」


 喉がカラカラにかわいて、ドキンドキンと心臓の音が耳のすぐそばで響いている。つばを飲み込んでみても、喉は潤わなかった。

 それでもわたし、伝えなきゃ。
 震える手にぎゅっと力を込める。


 どうか、届いて。
 わたしの、はじめての気持ち。






「わたしもね……好きなの。ヨルくんのことが」





 言ってしまってから、ぎゅっと目を閉じた。気持ちを言うまでは緊張して逃げ出したいのに、伝えている最中はスラスラと言葉が出てきた。

 それはたぶん、ヨルくんへのたしかな気持ちがここにあるから。「好き」っていう想いが、この心臓に宿っているからなんだ。

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