よあけとあさひ

「アサも、好き? 俺のこと……すき?」



 こくりとうなずくと、ヨルくんは顔をそらした。ヨルくん、耳まで真っ赤になっている。
 だけどきっと、それと同じくらい……ううん、それ以上にわたしの顔のほうが赤い。

 ヨルくんを見ていると、胸がいっぱいになる。
 伝えよう、この気持ちを届けようっていう思いでいっぱいになる。



「……ヨルくんが、わたしを変えてくれたの。わたしはいつもあきらめてばっかりだったけど、ヨルくんのために、ヨルくんの笑顔をみるために、これからも生きたいって思ったの」


 もっと、ヨルくんに伝えたいことがある。
 そこからは、ダムが決壊したように、言いたいことがあふれて止まらなかった。


「わたしが落ち込んだとき、はげましてくれてうれしかった。そばにいてくれてうれしかった。小説のこと、すごいってほめてくれてうれしかったし。手紙交換しようって言ってくれたのも、ベランダでよく話してくれたのも、全部、ぜんぶ」


 そこで言葉を止める。ヨルくんはわたしの目をじっと見つめたまま、そらさなかった。


 ゆっくりで、いいよ。
 そう言われているような感覚になる。


 薄い桃色の空にむかって、わたしは大きく息を吸った。肺に空気が入り込む感覚。

 それを感じてから、わたしはゆっくりと、吐きだした。


「……ぜんぶ、好き」



 ヨルくんがゆっくりと目を伏せた。それはまるで、わたしの言葉を噛みしめているみたいだった。

 鮮やかな赤色をしているいちご飴を忘れてしまうくらいに、わたしたちはお互いのことを見て、言葉を交わし合うのに夢中だった。
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