よあけとあさひ

3. 伝えたかった想い

【ヨル side】


 俺の十四年の人生は、ずっと輝いていた。大好きなバスケ部に所属して、毎日バスケに明け暮れる日々。学校での勉強はそこまで得意じゃなかったけど、いろんな人に囲まれて本当に楽しく過ごしていた。

 コクハクってやつも、実はなんどかされたことがある。もちろん全部断ったけど。


 すべてが順調だった俺は、ある日、病気を告げられた。何日も発熱が続き、おかしいと思った母さんが病院に連れていったことがきっかけだった。

 運動禁止、すぐに入院。学校にも部活にも行けなくなって、正直絶望した。なんで俺だけがこんな思いしなきゃいけないんだってずっとずっと悲しみの波に呑まれていた。


 そんな気持ちでむかえた入院初日、俺はアサに出会った。はじめて目があったその瞬間から、きっと何かが変わるんだって。そんな不思議な予感がしていた。

 俺が何か言うたびに、表情がコロコロ変わる。そんなところがかわいいと思った。涙を流していると、どうにかして笑顔にしてやりたいと思った。

 ベランダで過ごすふたりだけの時間が大好きだったし、特別に小説を読ませてくれるのも嬉しかったし、手紙の交換をしてアサの気持ちを受け取れるのが幸せだった。

 おれは、病気になって絶望していたというのに、それと同じくらい。いいや、それ以上に幸せな出会いと、未来への希望をもらった。
 それはぜんぶ、アサがいてくれたからだ。

 アサと出会ったあの瞬間から、俺の世界は変わったんだ。

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