弟は離れることを、ゆるさない
1.
私には一個下の弟がいる。
父似の私と違って、美人な母に似た弟は顔が良く、昔からとてもモテる。
だからだろう。美人でもない私を視界に入れたくないと言わんばかりに、中学に上がると突然目を合わせてくれなくなった。
ここ三年は会話をすることもなく、まるでそれが当然というように、弟は今日も私と目を合わせることをしない。
だから、
「聞いてよ、琴音ー!うっかり弟のスマホ盗み見たらいきなり死ねとか言ってきてさ。彼女もいないくせに、なにいっちょまえに気取ってんのって感じしない!?」
学校の休み時間、私に弟の愚痴を吐く親友の紗絵のことが、羨ましくて仕方がなかった。
『死ね』でも『うざい』でも『消えろ』でもいいから、私も弟の葵に喋りかけられたい。
私は葵と口喧嘩することさえも、ゆるしてもらえない。
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