弟は離れることを、ゆるさない
牛乳を一気に飲み、葵に置いて行かれないように家を出る。けれど葵の歩くペースが早く、どうしても駆け足になる。
「まって葵。私、何か気に触るようなこと言ったかな」
「……色々な」
「色々ってなに!?言ってよ、家族でしょ!」
しつこく後ろから話しかけていると、葵はピタッと足を止めた。
「家族だから余計、言えないこともあるんじゃねぇの」
「――ない、私はないよ!葵に言えないことなんてなにもない!」
「俺はある。おまえだから言えないことがある」
「――な、なにそれ……なんで言ってくれないの?」
「家族だから。おまえが俺と家族じゃなくなっても良いなら、一番大事なこと教えてやるよ」
それだけを言い残すと、葵は止めていた足を動かし、また、歩き始めた。
家族じゃなくなって良いなんて、葵はなにを言ってるの。
でも、分かったことが一つある。
葵は姉が私だから、私と家族だから、私に一番大事なことを隠して生きているんだ。