弟は離れることを、ゆるさない


その葵の表情を見て怯む。


葵がどういう風に抱こうが、葵の勝手なのに。
女の子も葵の抱きかたに同意しているかもしれないのに、余計なことを言ってしまった気がする。


「……ごめん、勝手に盗み見て。でも、たまたまで……ドアが勝手に開いてたから見ちゃったの」

どういう風に女の子を抱いているか知ってしまっていたため謝ると、葵は私から目を逸らした。


「しょうがないだろ。俺はこういう抱き方しかできないんだから」

「なんで?」

「ずっと想い続けてるヤツを抱けないから。別のヤツを重ねて抱いてる」


今まで見たことないくらい悲しそうな表情をする葵。


葵がそこまで想い続けている人はいったいどんな人なんだろう。


けれど葵がその人のことを私に教えてくれることはこの先ない。


ーー私と葵が家族でいる限り、葵の想い人は永遠に知ることはできない。


家族じゃなくなるなんて、無理だよ……できないよ、葵……



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