弟は離れることを、ゆるさない

「私、良くわからないけど諦める恋愛なんてないと思う……結婚してる人は法律上ダメだけど、離婚する可能性もあるし、もし先生を好きになっても頑張れば叶うかもしれないじゃん……芸能人だとしても、葵もそっちの道に進めば可能性はあるし」


「何が言いたいんだよ」


歯切れが悪い私に急かす。


「……だから、他の子で葵が想っている人の想いを埋めるなんてダメだよ。そんなの、葵もツライじゃん……私、応援するから。例え葵の恋愛に味方がいなくても、私は絶対味方だから」


だから頑張ってほしい。自分の想いを諦めないでほしい。


世界中が敵になっても私だけは味方になれる。


唇を噛み締めて葵の目を見る。葵の強張った顔が緩んだ気がした。


「じゃあさ、俺が想ってる人が今、目の前にいるヤツだったら？」

「…………え？」

「無理だろ、そんなの」

「…………な、なに」


葵の、今目の前にいる人は私なはず。


葵の想い続けている人は


…………私だって言うの？