弟は離れることを、ゆるさない
「…………私が……代わり?な、なにをするの……」
そう質問すると、葵の鼻が私の鼻につきそうなくらい、葵は私に近づいた。
「抱きしめてそのふっくらした唇に何度も軽く口づけをして、舐めて、吸って、俺のことしか考えられなくする」
私の唇を人差し指でなぞり、唇に触れた指を自分の唇に触れた。その指をいやらしく舐める葵につい、ドキッとしてしまう。
目の前にいるのは私のよく知る葵のはずなのに、全然知らない人がいるみたいだ。
「――キス、させて」
今の葵に私はどう映っているのだろう。
きっと私は映っていなくて、ずっと想い続けている人が映っているんだ。
「だめだよ、私、琴音だよ?血が繋がってる姉だよ?」
「分かってる」
「私とそういうことがしたいの……?」
「したい。キスして、俺のことしか考えられなくして、抱きたい。全部俺のものにしたい」
まるで私に欲情しているような、夢で見たような眼差しを向ける葵。
私とキスしたいだなんて、葵が何を言っているのかさっきから全然頭に入ってこない。