弟は離れることを、ゆるさない
気を紛らわさなきゃ。
ーー気になる人を見つけて早いところ連絡先を交換しなきゃ。
カラオケの大部屋に入り、女五人、男五人の合コンが始まった。お互いに自己紹介をし終えると、一番端に座っていた茶髪で短髪男の子が「あの」と話しかけてきた。
確か私たちより一学年下で名前は帯刀悠生くんと言っていた。
一重の凛々しい目が印象的な男の子。パッと見たところ爽やかそうな顔立ちだ。葵と真逆のタイプなような気がする。
「皇ってかっこいい名前ですね。もしかして、弟とかいます?」
「うん。一個下に弟がいて葵って名前だけど……もしかして私の弟知ってるの?」
「やっぱり! 皇とは塾が一緒でした。そっか、皇のお姉さんだったんですね」
嬉しそうに微笑む悠生くん。きっと、葵と仲良くしてくれていたんだろう。