弟は離れることを、ゆるさない
「でも琴音さんと出会えてラッキーです。本当に来て良かったー!」
葵とは違う、欲望がない目にホッと肩を撫で下ろした。
この子とは同じ歩幅で歩いていけるような気がする。
結局、最初から最後まで悠生くんとしか会話をせず、六時にカラオケを出る私達。デザートが頼めるお店に入ろうと話している中、私のスマホが鳴った。
着信の相手は葵。鳴り止むのを待ち、LINEの画面を確認すると【飯作って待ってるから。早く帰ってきて】というメッセージが三十分前に送られてきていた。
「琴音さん、スイーツのお店楽しみですね。……琴音さん?」
「えっ!?あ、うん……」
慌ててスマホを直す私に悠生くんは首を傾げた。
「何かありました?」
「えっと……ごめん、私もう帰るね。門限厳しくて……」
「え?それなら送りますよ!琴音さんがいなきゃいる意味ないし……」