弟は離れることを、ゆるさない
「ごちそうさまでした。美味しかった。ありがとう」
「……ん、おまえが帰ってくるなら安いもんだよ」
葵は今朝から返事に困ることばかり言う。
私は葵が好きな人ではないのに、もしかすると葵は既に重ねてしまっているんだろうか。
……そんなわけない。
私が葵の姉だから。葵なりに気にしてくれているだけだ。
「俺もう風呂入ったから、入ってこいよ」
「俺が茶碗洗っとくから」と言う葵の言葉に甘えてお風呂に入る。この後、葵が私を抱くかもしれない。
そう思ったら緊張で体が強張る。いつも以上に念入りに体を洗った。けれど、なかなか湯船から出ることができずにいると、
「大丈夫か?そろそろ出ろよ」
浴槽のドアの前で葵が声をかけてきた。