弟は離れることを、ゆるさない


「人間皆、墓場まで持っていかなきゃいけないことの一つや二つあるだろ」

「……でも」

「俺の想いはとっくに墓場まで持って行く決心はできてる。一緒に背負ってくれるんだろ」


今朝、私は葵を受け入れると決めた。
墓場まで持っていかなきゃいけないことだけど、それは私だけじゃない。葵も同じだ。 


「――――うん」


か細い声で返事をすると、葵は私の手からカップを取り上げ、洗面台の上に置いた。


葵の手がそっと私の頬に触れ、ゆっくりと、触れるだけのキスをする。ふと、唇を離した葵。


「水飲んだからか。口、冷たいな」

まったく緊張していないように見える。


私は怖くて、恥ずかしくて、ガチガチだというのに。


そんな私なんか気にも止めず、葵はまた、今度は吸い付くように、私の唇に何度も何度もキスを繰り返した。



――血の繋がった弟と、誰にも言えないことを今から始める。




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