弟は離れることを、ゆるさない


私も葵のことが心配だ。
けれど、また無視をされたらどうしようという不安でなかなか頷けない。


私と葵が三年ぶりに喋ったことを知らない母は、私を見て「はあ」と息を吐いた。そして、

「アンタ達、いつまで喋らないつもりよ。家族なのによそよそしくて。三年間アンタ達にどれほど気遣ってきたと思ってんのよ」

私と葵がよそよそしくなった鬱憤をぶつけてきた。


お母さんに久しぶりに話したことを伝えることもできるけど、「なにを話したの」と聞かれたら言えないことをしてしまっているからか、葵と話したということができなかった。


「気遣わせてしまってごめん。申し訳ないけど、これからも話すことできないかも……」

「だから、明日葵の教室に行って来てって言ってんの。一言でも話せば次からも話せるもんよ」


どうしても葵と仲直りしてほしいお母さんは、私にしつこく葵の教室に行くように伝える。


明日葵と話せたとしても、何事もなく葵の顔を見ることができるだろうか。


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