弟は離れることを、ゆるさない
この日も葵は夜遅くになっても帰ってくることはなく翌日を迎えた。
お母さんから「葵の教室に行くなら弁当持ってってね」と言われ、葵の分のお弁当を渡された。
「行ってきます……」
玄関を出ようとすると「家に帰らないって言われたらこれ渡してちょうだい」と一万円を差し出された。
「お金?」
「あの子帰って来ないからお小遣い渡せないのよ」
「でも……学校に一万円も持っていくのは怖いよ。それはお母さんが自分で渡してよ」
「そうね。じゃあ、なにがなんでも帰ってくるように説得してね」
「連絡するように言って」から、「帰ってくるように説得して」と、要望が変わっているお母さん。
私達の自分勝手な都合で周りの人を困らせるのはダメだ。
葵と家族に戻りたいなら、ちゃんと話し合わなきゃいけない。