弟は離れることを、ゆるさない


体を洗い、湯船に浸かる。



お母さんが言っていた『あの子、将来捕まったりしないわよね』という言葉が脳裏に浮かんできた。


今の葵は髪の毛はシルバー色で派手だし、耳にジャラジャラとピアスをつけている。


お母さんに『どうだろう』と返しはしたけれど、いくら見た目が派手になったからといって、犯罪に手を染めるようなことはしない……と、そう、信じたかった。


葵のことを考えたくなくてお風呂場に来たというのに、結局、葵のことを考えてしまっていた。


もうすぐ葵が帰ってくるだろう。鉢合わせをしないように、お風呂から出てすぐに自分の部屋へ行こう。そう思い上がろうとしたとき、浴室ドアが開いた。


目の前には真っ裸の葵が立っており、私を見て、

「……あ」

と一言、言葉を発した。


持っていたタオルで咄嗟に下半身を隠した葵は、なんとも気まずそうな表情をしていた。


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