弟は離れることを、ゆるさない


下半身には目がいっていなかったけれど、昔とは違う逞しい体つきにドギマギしてしまう。

「ーー私もう出るから……」

咄嗟に湯船から立ち上がったことによって、葵に裸を晒してしまった。血の気が引き、

「ご、ごめん!」

もう一度湯船に浸かり直す。すると葵は「いや、俺の方こそごめん。ごゆっくり」と浴槽のドアを閉めて出て行った。

三年振りに話せたというのに、よりにもよってこんなハプニングになるなんて、最悪だ。……いや、こんなハプニングでもなければ、今後も話せないままだった気もする。

お風呂から出たら声をかけてみても良いだろうか。


◆◆◆


ほどなくしてお風呂から出た私は、パジャマに着替え髪を乾かし葵の部屋のドアの前まで向かった。

手が震える。

この三年間、こうやってドアの前に立っては何度声を掛けようとしただろう。でも今日は違った。ハプニングだったからかもしれないけれど、葵は話してくれた。

ーー大丈夫、今の私なら大丈夫。


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