気になる彼女のマスク下のヒミツ

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自転車を5分程漕げば見えてきた校舎。

着くまでずっとヘラヘラと笑いながら話し掛けてきたチャラサイコパス男。
コミュニケーション力ありすぎて怖い。

これが陽キャか。理解。


「本当にありがとうございました~。俺、かなりの方向音痴だから先輩いなきゃ辿り着けなかったよ。」
「助けになったのなら良かったです…では、私はこ「名前は?」…え?」
「先輩のなーまーえ。俺は1年の三ツ谷 蘭丸《みつや らんまる》です。よろしくねん。」
「………ア!アンナ トコロニ ネコガ!?」
「は?」
「じゃーな!!!!!」


一瞬逸れた視線の隙に爆速で自転車を漕ぐ。
唸れ…っ、私の筋肉!!

駐輪場まで必死に漕ぎ、自転車を無事に置いた頃には謎の疲労感に襲われた。

許すまじチャラサイコパス男。


「まぁ…良い匂いだったっていうのは認めるが………って変態か!私は!!」
「何一人で騒いでるのよおバカ。」
「あ、美々子ちゃん!」


下駄箱で頭を抱えていれば私の小学校からの幼馴染み兼大親友である竹虎 美々子ちゃん《たけとら みみこ》ちゃんが呆れた表情を浮かべていた。

恥ずかしいところを見られてしまったぜ。


「また匂い問題?真知が良い匂いって言うなんて珍しいっていうか超久しぶりじゃん。」
「いや、まぁ…うん。ちょっと悔しいっていうか屈したくないっていうか…複雑な乙女心、的な?」
「草。」


美々子ちゃんは家族以外で唯一私のヒミツを知っている人物だ。

小学校でのとある出来事によりヒミツがバレて、そこから仲良くなった。
今じゃ大切な思い出です。

3階まで上がり、廊下に貼り出されたクラス発表を少し緊張しながら見れば今年度も美々子ちゃんと同じクラスだった。

万歳!!


「やったー!今年も一緒とはこれは運命だよー!!」
「はいはいドードー。さっさと教室行くよ。」
「そんなクールな美々子様も素敵です。」


正直、私は友達が少ないと大声で言うことが出来る。

別に話すし、仲が悪いとかじゃない。
ただ美々子ちゃん以外の人とは積極的に話さないだけ。

大人数の場は必然的に匂いも増える。

たくさんの匂いを感じ取ってしまうと体調が悪くなってしまうのだ。
だから私は狭く浅い関係性を保っている。


(向き合うことから逃げてる…とも言う、けど。今の私にはこれくらいがちょうど良い。)


いつかは、とは考える。

友達だけじゃなくて、好きな人…とか。いつか、いつか私も大切な人をたくさん作りたい。

臆病者なんだ私は。


「こら。まーた暗い顔して。別に新しい交流を絶対に作らなくちゃいけないなんてルールはないんだから。」
「美々子ちゃん…。」
「真知は匂いだろうけど、幼馴染み舐めんな。顔見ただけで何を考えてるか大体は分かるわ。」
「美々子ちゃん…っ、好きです!貢がせて!!」
「限界オタクか。」


全力で美々子ちゃんに抱き着く。

こんな真っ直ぐな美々子ちゃんだから私は昔から甘えてしまうのだ。

今がマスクをしていて本当に良かった。
こんなだらしない笑顔を見られたら恥ずか死する。


(さっきまでの疲労感が嘘のようになくなっていく。これぞ友情パワーか…好きです。)


私は窓側の一番後ろ、美々子ちゃんは私の隣。

平和とはここに存在した。
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