気になる彼女のマスク下のヒミツ

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壊れたブリキ人形のように見上げた先にはとんでもない美形男子が立っていた。

腕を組みながら本棚に寄り掛かるようにしてこちらを見下ろす姿はそれだけで圧倒的オーラが滲み出ている。

短髪の黒髪によって隠されることのない顔はどのパーツもピタリと当てはまっていた。
長い手足に筋肉質な体からは色気の暴力しか感じない。

正直に言おう。


(間近でこんなの見たら鼻血が出てしまう…っ、耐えろよ私の血管!?)


大混乱に陥っている思考回路を必死に回復させようとする私の努力を嘲笑うかのように一歩一歩近づいてくる色気の暴力。

ビタンッとさらに背中を壁にくっつけた。


「"何であんなクズを好きになるんかね…全世界の女子に一度ならず億回謝った方が良い"だったよな?」
「き、記憶力凄いッスね…。」
「この俺にそんなふざけたことを言う女がいたとはな。ククッ…面白ぇ。」


私、人生16年目にして面白ェ女認定頂戴しやがりました。

現実でこんなこと言う男いるんだ!?
先週のドラマで何か見たな!?


(これが…ガチ中のガチ俺様!!!!!)


出会えたことに謎の感激を得たが、すぐに冷静になる。

ヤバい。
さっきの発言、一言一句聞かれてたらしい。


「あの…本当に、別に今日のことを…えっと、だ、誰に言うとか絶対にないんで…はい、…。」


ドン引きするくらいキョドってるな私。

どうやってこの場から逃げようかを必死に考えていると助けは突然現れた。

たっつん~という気の抜けた誰かを探す声にピクリと目の前に立つ色気の暴力が反応したことを私は決して見逃さなかった。


「も~やっと見つけた。電話しても全然出ないし…新入生の俺にもっと優しくしてよね。」
「待ってやるとは言ったが、電話に出るとは言ってねぇよ。」
「そういうの屁理屈って言うんだよ?」
「うるせぇ。」


私は忍者、私は透明人間、私は空気…とずっと唱えながらそろりそろりと移動する。

話に夢中になっている今のうちに逃げるが勝ち!

目標地点まであと少し…っ、というところでお腹にグルリと逞しい腕が回った。


「おいおい。何も言わずにいなくなるなんて随分と寂しい別れ方をじゃねぇか。」
「え、マジマジ!?たっつんが自分から女子を引き留めるなんて初めて見たんだけど!?!?」
「うるせぇ。」


持ち上げられたことでぶらんと下がる足をバタバタと動かしながら抵抗を試みるが、まったく動かない。

てか普通に恥ずかしすぎて無理!!!!!

やっと回復してきた思考回路がまた大混乱にシフトチェンジしてきた時、むにゅりと両頬を手で挟まれた。

挟まれた?


「たっつんが興味を持つなんてどんな子かと思ったら先輩じゃーん!やほ、朝ぶりだね?」
「チャ、…。」
「チャ?」


チャラサイコパス男再降臨とか誰が予想したよ。

終了のお知らせです、と頭の中で無慈悲なアナウンスが鳴り響いて泣きたくなった瞬間でした。
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